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ヤマアカガエルが早くも産卵開始

軽井沢野鳥の森にある小さな池「どんぐり池」。例年、3月中旬にヤマアカガエルの産卵が始まります。が、なんと今年は2週間ほど早い、3月1日に最初の産卵が確認されました! 2月28日は雨が降っていたので、その夜に産卵したのかもしれません。

3月2日、現地を取材に行きました。天気は快晴。どんぐり池の水面には、まだ芽吹かない森の木々と青空が写り込んでいます。水中にヤマアカガエルの卵塊をひとつ発見。これが前日に見つかった卵でしょうか?そっと手ですくい上げてみると・・・。

 

卵を包むゼリーが、まだぷるぷるしています。ヤマアカガエルの卵は、日が経つとゼリーが柔らかく、でろでろになってしまうので、この卵塊はまだ新しいことがわかります。

 

 

卵を拡大してみると、一粒ひと粒が、ブツブツとした粒のかたまりになっています。発生の初期段階、卵の細胞分裂が進んで細胞の塊りになった「桑実胚」です。やっぱりこの卵塊が、1日に見つかったもののようです。

ヤマアカガエルは雨の夜や、暖かい日中に繁殖行動を行います。しかしこの日はあまり気温が高くならなかったので、カエルたちは活動していませんでした。一方で水底には、ヤマアカガエルの死骸が、メスばかり5匹も沈んでいました。

 

 

メスのカエルが産卵のために池にやってくると、待ち構えていた何匹ものオスが群がり、メスを奪い合う「カエル合戦」が発生します。オスたちに寄ってたかって抱きつかれ、結果的に絞め殺されてしまうメスが少なからずいるのです。しかし残されていた卵塊はひとつだけ。産卵したメスは1匹だけということです。6匹のメスがやってきて、そのうち5匹が命を落とし、1匹だけが産卵できたのでしょうか?「メスが産卵のために、多数のオスが待ち構える池に集まる」という繁殖システムを持つがゆえに、その瞬間の性比が著しくオスに偏り、オス同士のメスをめぐる争いが激しくなるのですが、あまりに残酷な結末です。

 

 

岸辺に、抱接するペアの姿がありました。カエル合戦に勝利したオスは、メスが産卵するまで背中に抱きつき続け、他のオスが近付くと足で蹴り飛ばしてメスを占有するのです。しかしこのペアで下になっているメスは目を閉じて動きません。すでに死んでいるのです。しかしオスは、死んだメスを離そうとはしません。繁殖期のオスは、メスらしいものには脇目も振らず抱きつきます。抱きつかれたのがオスや産卵を終えたメスだった場合は、「グッグッグッ」という声を発します。「リリースコール」と呼ばれる声で、これを聞いたオスはすぐに手を離すのです。しかし死体は声を上げません。抱きついたオスは、相手が死んでいることをすぐには判断できずに、抱き続けてしまうのです。単純なコミュニケーションに頼るが故の過ちです。

ヤマアカガエルの繁殖は、例年ならば3月中旬から4月いっぱい続きます。ポカポカと暖かい日があったら、そっとどんぐり池に近付いてみましょう。「少女の笑い声のよう」と形容される、オスたちの恋の合唱が聞こえてくるでしょう。そして岸辺で静かに待っていれば、滑稽に見えながらも真剣な、子孫を残すための戦いを目撃することができるはずです。

大塚