春の花は駆け引き上手?
夏鳥にかまけている間にも、軽井沢野鳥の森では春の花が次々と咲いています。1枚目の写真はフデリンドウ。小さいですが、青い星のような花が綺麗です。春の花は小さいものが多いので、足元をよく見ながら探さないと見落としてしまいます。5月10日に遊歩道を歩きながら確認した開花植物は以下の通りです。
草の花:カキドオシ、ニッコウネコノメ、ハシリドコロ、タチカメバソウ、ヤマエンゴサク、オオコガネネコノメ、ワサビ、ムラサキケマン、シロバナエンレイソウ、タチツボスミレ、トウゴクサバノオ、ヒナスミレ、ヒゲネワチガイソウ、クリンユキフデ、セイヨウタンポポ、フデリンドウ、ミツバツチグリ、キジムシロ、ヒカゲスミレ、ルリソウ、エイザンスミレ、ノミノフスマ、オオバタネツケバナ、ヘビイチゴ、マルバスミレ、セントウソウ、タネツケバナ、アズマイチゲ(見つけた順)
木の花:クサボケ、コブシ、ミヤマウグイスカグラ、コクサギ、アオナシ、ヤマザクラ、サワシバ(見つけた順)
映画に出てくる「エイリアン」のような長い花を咲かせるヤマエンゴサク。花の後ろに伸びる袋状の部分を「距(きょ)」と呼び、中に蜜腺が隠されています。
この花には、長い口吻を持ったトラマルハナバチの女王蜂が訪れます。自慢の長い口吻を使っても、花の奥までいっぱいに差し込まなければ、蜜が吸えません。すると顔に花粉が付着して運ばれるという算段です。
似たような花をつけるムラサキケマンも、ヤマエンゴサクと同じ仕組みで、トラマルハナバチが花粉を運びます。
白い花のスミレを見つけました。マルバスミレです。スミレの仲間も、花の後ろに伸びる袋状の「距」があり、長い口を持つ「ビロードツリアブ」などの虫が蜜を吸って花粉を運びます。
スミレの仲間の花弁には、放射状の模様が入っています。これは「ガイドマーク」と呼ばれ、虫に蜜のありかを教え、正しい向きで花に接近するように促す印です。滑走路の誘導灯のようなものですね。しかし、自然は思い通りにはいきません。
タチツボスミレで、「距」に開いた穴をかじるアリを見つけました。この穴を最初に開けたのは、恐らく口吻が短いオオマルハナバチでしょう。「距」に穴を開けて蜜を盗む習性があるからです。このアリは、その穴を見つけて蜜のおこぼれにあずかろうとしているのだと思われます。
植物と虫は、お互いを利用しようと、一方は美しい花弁や甘い蜜を、もう一方は色覚や長い口吻を発達させ、共に進化してきました。それがまるで鍵と鍵穴のような、花と虫の関係を作ってきたのです。しかし進化の世界はなんでもあり。正攻法ではない、邪道と思われる性質や習性も、それが生存に有利であれば進化しうるのです。
大塚