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軽井沢にヒレンジャク来てますよ!!

この冬は久しぶりに、レンジャクが数多く渡来しているようです。しばらく前から、スタッフや森を歩いたお客様から「レンジャクを見た」という情報が、数日おきに寄せられていました。私も「ケラ池スケートリンク」のリンク整備中に、上空を通過する群れを目撃したことがありました。そして1月22日に実施した「軽井沢野鳥の森」の鳥類調査では、レンジャクの鳴き声と、飛び去る8羽の後ろ姿を確認しました。

しかし情報は多いのだけれど、まだしっかりと姿を観ることができていなかったのです。そうだ、長倉神社はどうだろうか?買い物に出る用事があったので、中軽井沢の長倉神社に立ち寄ってみました。ここは神社の周りが「長倉公園」として整備されており、大木にたくさんのヤドリギが寄生している、有名な「レンジャクスポット」なのです。

そして・・・、いました。

 

ヒレンジャク

 

この写真では尾羽が見えませんが、1枚目の写真を見ると、尾羽の先が緋色(赤)なのがわかると思います。ヒレンジャクです。冬、日本に渡来するのは、尾羽の先が緋色のヒレンジャクと、黄色のキレンジャク。軽井沢ではヒレンジャクが多数派です。この時は5羽のヒレンジャクが、ヤドリギに集まっていました。

 

「ヤドリギの実は美味しいね」「そうだね」

 

2羽がヤドリギの上に仲良く並ぶシーンもありました(木の高い場所なので写真は拡大しています)。レンジャクは群れで行動し、連なって止まることも多いので、漢字で「連雀」と書きます。そして木の実(液果)を好むのですが、真冬になるとそれも残り少なくなります。そんな時でも、ヤドリギにはまだたくさんの実が残っています。レンジャクはヤドリギの実を食べ、満腹になると周囲で休憩し、時々川に降りて水を飲み、そして排泄し、また実を食べる。そんな行動を繰り返します。

 

「風に吹かれてぶーらぶら」

 

しかしヤドリギの実には罠があります。種子を包む果肉がネバネバし、糞として排泄してもネバネバなのです。糞は糸を引いて長〜〜〜〜く伸びます。レンジャクは糞が切れるまで、その場を動くこともままなりません。

長〜く伸びたヤドリギの種子入り糞は、上手くいくと枝に絡みつき、その粘着質によって枝に貼り付きます。そうやってヤドリギは、木の枝に根をおろすことができるのです。レンジャクはまんまと利用されているのですね。

 

・・・ところでレンジャクは、比較的長い時間ヤドリギの周囲にとどまり、そこで食事と排泄を繰り返します。ヤドリギとしては、レンジャクに早く飛び去って、種子を遠くに運んでもらいたいのではないでしょうか?

植物の実(液果)には、色鮮やかな赤や紫外線色を身にまとって野鳥を魅きつけ、さほど美味しくない(どちらかというと不味い)実を食べさせて、さっさと飛び去ってもらおうという作戦もあります。一粒二粒と無くなっていくマムシグサの有毒な実などは、恐らくそんな作戦でしょう。一方でヤドリギの実は、薄い黄緑色であまり目立ちそうにありませんが、果肉は薄甘く、レンジャクも美味しいと感じているかもしれません。レンジャクは長時間ヤドリギの周りに滞在してすぐ近くに排泄し、結果的にヤドリギは狭い範囲に集まって寄生しています。これはヤドリギの作戦なのでしょうか?

ヤドリギは落葉広葉樹の枝に寄生します。飛び去った先で種子を排泄されても、そこに寄生に適した木があるとは限りませんね。しかしヤドリギが寄生している木で排泄されれば、種子はその木の枝に付着するので、発芽できる可能性が高まるでしょう。ヤドリギの寿命は30年程だそうですから、次第にヤドリギの集団が形成されます。そこはレンジャクにとって魅力的な場所となり、さらにレンジャクを集めるでしょう。ポツンとひとつ生えているヤドリギよりも、集団のヤドリギの方が、より確実に種子が散布される可能性もあるのです。

ヤドリギに集まるヒレンジャク。バードウォッチャーにとって冬の風物詩である光景の裏には、そんなヤドリギのしたたかな作戦が隠されているのかもしれません。

大塚

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