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ニホンリスの失敗

軽井沢野鳥の森には、ニホンリスが生息しています。高い木の枝から枝へと移動していくので、その姿に気付くことは稀なのですが、時々見つけるチャンスがあります。それはオニグルミの実を食べている時です。ニホンリスが食べるのは、オニグルミの種子の中身です。しかしオニグルミの種子には硬い殻がありますので、それを歯で削って割らなければなりません。その時、「ジョリジョリジョリジョリ」という独特の音が響くのです。

先日も、その音でニホンリスの存在に気付きました。音を頼りに姿を探すと、枯れて途中で折れた細い木によじ登って、抱きつくような姿で幹をかじっています。「あれっ?オニグルミ食べてるんじゃなかったの?」そう思って観察を続けました。

 

枯木をかじるニホンリス

 

この角度から見ていると、枯木をかじっているようにしか見えません。かじる音も先ほどの「オニグルミの殻を削る音」とは異なります。もうオニグルミは食べ終わって、別の事をしているのでしょうか?

しばらくすると、ニホンリスは隣の木を登り、梢を移動して去って行きました。さて、何をしていたのでしょう?視界からリスが消えたのを確認してから、問題の場所へ接近してみました。

 

挟まってる!!

 

なんと!この枯木は材の中心が朽ちて中空になっていて、その中にオニグルミが入っていました。そして幹の割れ目から、オニグルミの種子が見えています。種子の周りの枯木には、真新しいかじられた跡が残っています。そしてオニグルミの殻にも、割ろうとして削った跡が残されているのでした。あのニホンリスは、このオニグルミを一所懸命食べようとしていたのです。

ニホンリスには、オニグルミの種子を貯食する習性があります。秋のはじめに採集したオニグルミの種子を、地面の土中や樹上の木の割れ目などに隠し、冬、食料が乏しい時に取り出して食べるのです。おそらくこのオニグルミも、ニホンリスによって隠されたのでしょう。その時は上の穴から入れたのかもしれません。しかし、いざ取り出そうとしたら、オニグルミが見えている隙間が狭く、取り出すことができなかったのでしょう。その場で割ろうと殻も削ったのですが、結局割ることもできず、諦めて去って行ったのだと思います。

「持ち上げて、穴の上から取り出せばいいじゃん」

・・・ニホンリスには、そこまでの知恵が働かないのかもしれませんね。

大塚

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