オシドリ夫婦は仲が良い・・・
今年も軽井沢野鳥の森周辺に、オシドリたちがやってきています。彼らは冬の間、山間の湖沼で集団越冬していました。軽井沢近隣では、碓氷峠を群馬県側に降りた妙義湖が有名です。そして春になると、複数のペアが繁殖のために移動してくるのです。
先日も、ピッキオ前のケラ池に、オシドリのペアがやってきました。オスは上の写真のように、艶やかな羽毛で身を包んでいます。一方でメスは、グレーと白のモノトーンの体色で目立ちません。しかし目のまわりの白い縁取りが、黒いつぶらな瞳を引き立たせて、可愛い顔をしています。
そしてメスの傍らでは、付かず離れず、オスが見守っています。メスが飛べば、オスもそれを追いかけて飛んでいく・・・まるで金魚の糞のようですが、そうやって常にメスを見守っているのです。その様子を見ると「オシドリ夫婦」という言葉が生まれたのも納得できますね。
これはオスによるメイトガードと呼ばれる行動で、他のオスがメスに近づかないように警護しているのです。メスは体内にオスの精子を貯蔵し、産卵の際に受精が行われます。オスはここで頑張らないとメスに浮気され、メスが産んだ卵の中に他のオスとの子供が混ざっている!!なんて事になるのです。
と、突然、オスが首を前に伸ばし、翼を斜めに立ててメスの前で突進して見せました。オス特有の「イチョウ羽」と呼ばれる、オレンジ色の大きな羽根が目立ちます。メスに対するディスプレイです。その直後、交尾しそうな雰囲気だったのですが、結局この時は交尾に至りませんでした。でもこうやって交尾を繰り返す事で、オスは自分の子孫を残す確率を高めるのです。
メスはケラ池や湯川で食事をして栄養を蓄え、営巣場所となる樹洞を求めて森を飛び回ります。多くのカモ類は地上に巣を作って産卵しますが、オシドリは日本では珍しい樹洞営巣性のカモなのです。そして枝の上も、器用に歩き回ります。
気に入った樹洞が見つかれば、そこで産卵・抱卵となる訳ですが、実はピッキオが掛けたムササビ用巣箱が、オシドリにとってもちょうど良いのです・・・。結果、ムササビが留守にしている巣箱で、ある日突然、鳥の卵が見つかります。
上の写真では、ムササビが運び込んだ樹皮の巣材の中に、卵が1個見えています。卵は毎日1個ずつ増えていき、10個ほどになるとメスが抱いて温め始めるのです。
メスは自分の胸の羽毛(ダウン)を抜いて、ムササビの巣の上にふかふかのベッドを作り、そこに卵を並べて温めます。抱卵するのはメスだけ・・・するとそれまで甲斐甲斐しくメスをエスコートしていたオスは次第にメスから離れて、あんなに仲が良く見えた「オシドリ夫婦」は解消となります。
メスの抱卵期間は約30日。卵から孵った雛は樹洞から地面に飛び降り(!!)、母親の後に続いて水辺へと移動します。6月頃、今年もケラ池で、親子の姿が見られるようになるかもしれませんよ。
大塚