オトシブミいろいろ
森の木々が葉を広げると姿を現す、小さな甲虫「オトシブミ」の仲間。毎年、5月の終わり頃から活動を始め、その存在は葉で作られた小さな巻物が、足元の地面に落ちていることで気付きます。
この葉っぱの巻物は、メスのオトシブミが作りました。中には卵が1つ、産み付けられています。卵から孵った幼虫は巻物の中身を食べ、そのまま蛹になり、成虫になると穴を開けて出てきます。そのためこの巻物は「揺籃(ようらん=ゆりかご)」と呼ばれます。
先日、クリの木でオトシブミのペアを見つけました。メスは切れ込みを入れてぶら下げたクリの葉で、交尾したまま主脈に噛み傷を付けていました(1枚目の写真)。葉を萎れさせて柔らかくし、さらに巻きやすくなるように加工しているのです。しばらくして再び同じ場所を通りかかると、メスは作業を続行しており、二つ折りにした葉を、先の方から巻いている最中でした。
あれ? オスは何処へ行ったのでしょう? 周囲を捜すと、近くのアザミの上でオスを見つけました。メスは葉を少し巻いたところで卵を産み付けます。オスは産卵を見届けると、メスの元を去ってしまうことが多いのです。
メスはそのまま葉を巻き続け、最後に主脈を齧って揺籃を切り落とします。その瞬間を動画で録ろうと思ったのですが、風で枝が揺れて録れませんでした・・・。
他にもオトシブミがいないかと見回すと、違う種類を見つけました。オレンジ色に黒い斑点があるゴマダラオトシブミです。
クリの葉の上を歩き回る姿を追っていると、葉に切れ込みを入れ始めました。今まさに、揺籃を作り始めたのです。オトシブミとは葉の巻き方が異なるので、これは観察したい・・・。しかし他にやらなければならない仕事もあるので、このまま葉を巻き終わるまで、1時間以上付き合っている訳にもいきません。やむなくその場を離れました。ちなみにゴマダラオトシブミの揺籃はこんな形です。
葉に切れ込みをL字型に入れ、葉の先から巻いて揺籃を作ります。揺籃は葉の切れ込みを入れなかった側とつながっていて、メスはそのまま揺籃を落としません。「落とし文」なのに落とさないのです。
違う日にはアブラチャンの木に、揺籃を巻いている途中の葉を見つけました。そこには茶色いオトシブミがいます。ヒゲナガオトシブミです。
首が長いのはオスのしるしです。葉を巻いていたメスはどこに行ったのでしょうか? 葉の乾き具合からすると、揺籃を作っている途中で放棄してしまい、それなりの時間が経っているようです。あたりを捜すと、同じ枝にある別の葉の裏で、じっとしているメスを見つけました。
メスのオトシブミが葉を巻く準備をしていると、そこにオスが飛来することがよくあります。メスがフェロモンを放出しているのかもしれません。そして交尾・産卵を終えると、オスはまた何処かへ行ってしまいます。しかし何故このメスは葉を巻くのをやめ、オスだけが巻いていた葉に留まっているのでしょうか? この2匹の間にどんなドラマがあったのでしょうね?
近くのミツバウツギの枝には、葉からぶら下がったオトシブミの揺籃がありました。今までミツバウツギでは、オトシブミの仲間を見たことがありません。ウスモンオトシブミという種類がミツバウツギを利用するらしいです。是非、姿も見てみたいものです。
他にも軽井沢野鳥の森では、クサコアカソにヒメコブオトシブミの揺籃がぶら下がっているのが見つかります。ハルニレやケヤキの下には、ルイスアシナガオトシブミの揺籃が落ちています。ノイバラにヒメクロオトシブミを見つけることもあります。森の中の様々な植物に、違った種類のオトシブミの仲間が暮らしているのです。
大塚