ギリシャ神話に登場する美少年ナルシス(ナルキッソス)は、泉に映る自分の姿に恋をしてその場から離れられなくなり、痩せ細って命を落としました。のちにその場所には黄色いスイセンの花が咲いたため、西洋ではスイセンの花をナルシス(Narcissus=スイセンの属名)と呼ぶそうです。キビタキの英名はNarcissus Flycatcher。そう、「スイセンのヒタキ」という意味です。オスの胸の鮮やかな黄色から名付けられたのでしょう。
軽井沢野鳥の森にある小さな人工池「どんぐり池」。「野鳥の森ネイチャーウォッチング」に参加された方には、「オタマジャクシの池」というイメージがあると思います。しかし実は、夕方に静かに待っていると、野鳥たちが水浴びに訪れる場所なのです。ゴールデンウィークが終わってから数日間、夕方ごとにどんぐり池に通ってその様子を観察しました。
クロツグミ♂
そっと池に近づくのですが、敏感なクロツグミはすぐに逃げ腰になってしまいます。飛び去る前に、その後ろ姿を捉えることができました。
クロツグミ♂
こちらのクロツグミのオスは、私の姿に構わずに水浴びを始めました。脇腹に茶色い羽毛が混じり、翼にも茶色っぽい羽毛が。どうやら若いオスのようです。ちょっと警戒心が薄いのでしょうか?
キビタキ♂
キビタキもやってきました。背や翼が黒い成鳥のオスです。池から流れ出す水路の周りをぴょんぴょんしながらどんぐり池に近付いてきます。どうやら飛んでいる虫を捕っているようです。
キビタキ♂
どんぐり池の岸辺に降り立っても水浴びはせず、周りを見回しては虫を捕っています。池から羽化するユスリカやカゲロウなどの水生昆虫を食べにきたようです。どんぐり池は夕食の場所でもあるのですね。
成鳥のオスが飛び去ってしばらくすると、1枚目の写真のキビタキが訪れました。頭や翼に茶色い羽毛が残る若いオスです。このキビタキもしばらく虫を捕まえていましたが、最後に水浴びをして去っていきました。幸いなことに、自分の姿には恋をしなかったようですね。
大塚