ケラ池の秋
ケラ池はスケートリンクの準備が始まりました。人工リンクエリアと天然リンクエリアを隔てる柵が設置され、人工リンクの水底に溜まった泥や藻も綺麗に洗い流されました。
人工リンクは10月15日のOPENに向けて製氷作業が始まりますが、天然リンクが凍るのはずっと先。池にはまだトンボたちの姿がありますよ。秋になり、森からケラ池に帰ってくるのが、オオアオイトトンボです。
体が金緑色に輝く、イトトンボとしては大柄なトンボです。昼頃になると活発に活動し、池の端でオスとメスが出逢います。
オスはメスの首元を腹部の先にあるハサミでつかみ、連結します。そのまま樹上へと飛び上がり、枝に止まって交尾します。トンボの交尾は、メスが腹部の先にある生殖口を、オスの腹部の付け根にある副生殖器にあてがう事で成立します。両性の合意がなければ交尾が成り立ちません。だからという訳ではありませんが、トンボの交尾はハート型に見えます(1枚目の写真)。
ケラ池の周りでは、赤とんぼの仲間も見ることができます。よく目につくのはアキアカネとマユタテアカネ。マユタテアカネは体が小さく、顔面に黒い模様(眉斑)があるのが特徴です。木立に囲まれた池に見られる種類で、ケラ池はまさにそんな環境です。
アキアカネは最もよく見かける赤とんぼだと思いますが、ケラ池で交尾や産卵は見られません。おそらく午前中に軽井沢南部の水田で産卵し、昼頃になると食事のために分散してくるのです。晴れた日の午前中、連結した赤とんぼが飛んでいく姿を見ることがありますが、あれは産卵場所となる水田へ移動する姿なのです。連休前の15日の朝、ケラ池でまだ眠りについているオスのアキアカネに出会いました。
活動中のアキアカネは枝先や地面に乗っかるように止まりますが、寝ている時はぶら下がるのです。
アキアカネのオスは、成熟すると腹部が赤く染まります。メスには赤くなるものとならないものがいて、赤くならないと「茶色いトンボ」になってしまいます。
アキアカネは秋のずいぶん遅くまで姿を見ますが、他の種類は徐々に姿を消してしまいます。同じく15日に撮影し、最近見かけなくなってしまったトンボも紹介しましょう。
お盆過ぎから9月前半までの約1ヶ月、トンボの湯のまわりの芝生やケラ池の上空を群れ飛んでいたのがこのトンボです。世界中の熱帯・亜熱帯に生息し、毎年春から夏にかけて、世代交代を繰り返しながら北へ分布を広げます。そして夏頃に軽井沢に到達。今年はちょっと遅かったですね。しかし水温が4度以下になる地域では越冬できないと言われていますから、ケラ池スケートリンクではもちろん冬は越せません。冬になると、産み残された卵も孵化した幼虫も、すべて死滅してしまうのです。大きく薄い翅と華奢な体つきは、長距離を旅するための姿です。
ミヤマアカネは翅に帯のような模様がある美しい赤とんぼです。浅い流れを好むので、ケラ池には生息していません。たまたま立ち寄ったのでしょう。多くのトンボは、生まれた水辺から一旦離れて過ごします。そのため、生まれ故郷とは違った場所に現れることもあるのです。スケートリンクの工事で一旦トンボがいなくなってしまったケラ池に、再びトンボの姿が舞っているのは、彼らの高い移動力のおかげなのです。
大塚