ウスバシロチョウの谷
軽井沢を含む関東甲信地方は、6月6日に梅雨入りが発表されました。爽やかな初夏の陽気が続いていただけに、一気に肌寒い雨模様になると、ちょっと憂鬱ですね。それでも晴れ間が出れば、森の中は昆虫たちの活動が活発になるでしょう。梅雨入り前の6月2日、エゾハルゼミの合唱が賑やかな軽井沢野鳥の森の遊歩道を巡回しました。その際に見られた昆虫をいくつか紹介します。
まず1枚目の写真はルイスアシナガオトシブミ。そう、木々の葉がすっかり開いて、それを巻くオトシブミの仲間が活動を始めました。葉っぱを巻いて作った揺籃(ゆりかご)に産卵し、それを切り落として地面に落とす習性から、平安時代の貴族が恋文を落として意中の人に拾わせる「落とし文」になぞらえて名付けられました。遊歩道にも揺籃が落ちていましたよ。ルイスアシナガオトシブミは、ハルニレやケヤキの葉を巻いて揺籃を作ります。ハルニレテラスの歩道上に落ちているのは、大抵この種類の「落とし文」です。
どんぐり池に向かう沢沿いでは、ヒメクロサナエのメスに出会いました。翅がキラキラしているのは、ヤゴから羽化したばかりの証拠です。ヒメクロサナエは川の源流に棲むトンボで、軽井沢野鳥の森を流れる細い沢でも生息しているのです。
日があたるメタカラコウの葉に、カワトンボのメスが止まっていました。カワトンボは川の水中に沈んだ植物に産卵するので、もう少し流れが広くて緩やかな川でないと生息できそうにありません。南軽井沢の発池川では見たことがあります。このメスは若いように見えるので、成熟したらまた何処かへ移動するのかもしれませんね。
カワトンボの仲間は分類が難しく、紆余曲折を経て今は2種類にまとめられているようです。この写真のメスは翅の縁紋(白いポッチ)の形と全体のプロポーションからアサヒナカワトンボと同定したのですが、合っているのでしょうか?
アブラチャンの葉の上には、コミスジがテリトリーを張っていました。黒い翅に白い3本の横筋が入るように見えるので「三筋蝶」。その仲間でも小さめなので「小三筋」です。時々飛び上がっては、滑空を織り交ぜた独特な飛び方で周囲を巡り、また近くの葉の上に止まるを繰り返していました。
そして、どんぐり池までの道にたくさん飛んでいたのが、このウスバシロチョウです。さながら「ウスバシロチョウの谷」。幼虫はムラサキケマンを食べて育つのですが、この谷沿いにはムラサキケマンが多く生えているので、ウスバシロチョウの数も多いのでしょうね。雨で寒い日にはあまり飛んでくれませんが、晴れて暖かい日には、まだしばらく、乱舞する姿が見られると思います。
大塚
〜ピッキオは2022年4月で30周年を迎えました〜
ピッキオは軽井沢にて自然体験アクティビティをご提供しています。1992年の設立以降、長野県軽井沢町を拠点に「ツキノワグマ保護管理」と「ネイチャーツアー」を行ってきました。設立以来培ってきた30年のガイド技術と野生動物の専門的な知識をもとに、皆様を不思議と魅力にあふれた生き物達の世界へといざないます。軽井沢にお越しの際には是非一度ご体験ください。