ACCESS

アブラチャンのオトシブミ

軽井沢野鳥の森は、オトシブミの季節です。遊歩道にはあちらこちらに、オトシブミの揺籃(ゆりかご)が落ちています。そしてちょっと気にして歩いていれば、オトシブミが葉を巻いて揺籃を作っている様子も、見つけることができるでしょう。

オトシブミの姿を見つけるには、オトシブミが利用する植物をよく観察する必要があります。クリにはオトシブミ(ナミオトシブミ)やゴマダラオトシブミ、ハルニレにはルイスアシナガオトシブミが見つかります。でも、どちらも高い木なので、観察できる場所は意外と限られています。しかしアブラチャンなら低木なので、目線の高さで探せます。しかも軽井沢野鳥の森では、アブラチャンは最も多い低木。そのアブラチャンでは、ヒゲナガオトシブミが見つかります。

先日、アブラチャンの葉の上にヒゲナガオトシブミのメスを見つけました。写真を撮ろうとカメラを準備していると、葉の付け根に左右から切れ込みを入れ、主脈をかじりはじめました。この葉で揺籃を作ることを決めたのです。そこで、この揺籃作成に付き合うことにしました。

 

10時11分:葉の付け根で主脈をかじる

 

主脈をかじられた葉は、だらんと下に垂れ下がります。するとヒゲナガオトシブミは、葉の裏でひと休み。しばらくすると、葉の左右の端を折り曲げます。

 

10時17分:葉の左右の端を折り曲げる

 

さらに、葉の裏を歩き回りながら、葉のあちこちに咬み傷をつけます。

 

10時28分:葉の裏から、たくさんの咬み傷をつける

 

そして6本の脚を上手に使って、葉を縦に二つ折りにします。同時に、主脈にいくつもの咬み傷を付けます。この咬み傷が、後に葉を巻く時の「折り目」になります。

 

10時59分:葉を縦に二つ折りにしながら、主脈に咬み傷をつける

 

あちこちに咬み傷を付けてからしばらく、二つ折りになって萎れ始めた葉を、先端から上に向かって巻き始めました。

 

11時26分:葉の先端から巻き始める

 

葉を半分ほど巻いたところで、揺籃に産卵のための穴を開けます。どうやって嗅ぎ付けたのでしょうか? どこからともなく寄生蜂が飛来しました(揺籃の左側)。

 

11時33分:口でかじって卵を産むための穴を開ける

 

そして体の向きを変え、開けた穴の中に卵をひとつ産み付けます。そのすぐ脇で、寄生蜂が様子をうかがっています。

 

11時33分:開けた穴の中に産卵、すぐ後ろでは寄生蜂が様子をうかがっている

 

さらに葉を巻き上げます。果たして、卵は寄生蜂に産卵されてしまったのでしょうか?

 

11時37分:さらに葉を巻き上げる

 

そして、葉を巻き終わると、最初に切れ込みを入れた葉の付け根の主脈をかじり、揺籃を切り落とそうとします。

 

11時40分:葉を巻き終わり、主脈をかじって揺籃を切り落とそうとする

 

切り落とされた揺籃は、地面に落下。卵が孵ると、幼虫は揺籃の内側の葉を食べて成長します。そして自分が食べた空洞の中で蛹になり、羽化すると成虫は揺籃に穴を開けて外界へと出てくるのです。

 

切り落とされた揺籃

 

葉の付け根をかじり始めてから、完成した揺籃を落とすまで、約1時間半でした。しかし、葉の先から巻き始めてからは15分程度。葉を巻く前の下準備が長いのですね。葉を選ぶところからと考えれば、卵をひとつ産むために、約2時間も掛けていることになります。そのためオトシブミは、一生に産む卵の数がとても少ないと言われています。少ない卵を、大切に葉で包んで産み残す。それでも寄生蜂の犠牲になったり、揺籃が路上に落ちて踏まれてしまったり、乾燥してしまったり・・・無事に成虫になれるのは、ごく一部なのでしょうね。

大塚

 

〜ピッキオは2022年4月で30周年を迎えました〜

ピッキオは軽井沢にて自然体験アクティビティをご提供しています。1992年の設立以降、長野県軽井沢町を拠点に「ツキノワグマ保護管理」と「ネイチャーツアー」を行ってきました。設立以来培ってきた30年のガイド技術と野生動物の専門的な知識をもとに、皆様を不思議と魅力にあふれた生き物達の世界へといざないます。軽井沢にお越しの際には是非一度ご体験ください。

あなたのご支援が必要です。野生のクマを未来へ。あなたの力を私たちに貸してください。あなたのご支援が必要です。野生のクマを未来へ。あなたの力を私たちに貸してください。