小さな花に小さな虫
赤と黒のツートンカラーの実は、トチバニンジン。葉が茂って薄暗い森でも、一際目立ちます。
風が吹いて猛暑がほんの少し和らいだ8月6日、鳥獣保護区管理員の業務で、野鳥の森の遊歩道を巡回しました。
避暑地と言われる軽井沢ですが、高原の日差しは強く、炎天下にいるとやはり暑いものです。しかし森に入ると木陰になりますし、植物が根から吸い上げた水を葉で蒸散させることから、気化熱によりいっそう気温が下がります。そこに風が吹けば、文字通り自然のクーラーです。
軽井沢野鳥の森はカラマツの植林地だった場所が多いのですが、一部はミズナラやクリをはじめとする落葉広葉樹林になっています。ミソサザイの沢には炭焼き窯の跡が残されていますから、おそらく昔は落葉広葉樹を伐採して薪や炭の原料として利用する薪炭林だったのでしょう。今ではミズナラやクリはすっかり大きく成長して高木となり、オオモミジやマユミがその下に枝を広げ、さらに下にアブラチャンやミツバウツギが葉を茂らせる、教科書通りの「森林の階層構造」を形成しています。
そんな軽井沢野鳥の森では、今は夏から秋にかけて咲く様々な花が見られます。こちらも暗い森の中で目立つフシグロセンノウ。花の直径は5センチほどもあります。
花の直径が1センチほどの小さなフウロソウの仲間が咲いていました。ゲンノショウコともミツバフウロとも葉の形が違います。念の為写真を撮って図鑑で調べたところ、コフウロという種類でした。
この日、確認した花は以下の通りです。
草の花:キツネノボタン、ダイコンソウ、ノブキ、ミツバ、クサコアカソ、ヒメジョオン、ミズヒキ、エゾハタザオ、クサアジサイ、ハエドクソウ、ムカゴイラクサ、ハナタデ、キツリフネ、ミヤマタニソバ、キンミズヒキ、オオガンクビソウ、シロヨメナ、ミヤマヤブタバコ、トモエソウ、ツユクサ、ツリフネソウ、ユウガギク、イヌトウバナ、イタドリ、ヤマニガナ、オオバコ、カエデドコロ、ミゾソバ、アマチャヅル、フシグロセンノウ、コフウロ、ヌスビトハギ、ミツモトソウ、キオン、ソバナ、ミズタマソウ、ヒヨドリバナ、オミナエシ、ホソバガンクビソウ、タケニグサ、シシウド、チダケサシ、ヤマウド、ハンゴンソウ、コオニユリ、シデシャジン、クルマバナ、オニルリソウ(計48種! 見つけた順)
木の花:ボタンヅル、ヤマハギ、ノリウツギ
一昨年に見つけたオオガンクビソウが、今年も無事に咲き始めました。ガンクビソウの仲間としては特大サイズの直径3センチほどもある頭花は、外側から順に咲き始めます。そこに2匹のシワクシケアリが訪れていました。
ミズヒキもよく見ると、小さな花を咲かせています。そこに、これまた小さな蛾が訪れていました。全長5ミリほどしかありません。図鑑を調べると「キスジホソハマキモドキ」という蛾が似ているのですが、ミズヒキの花と比べても、写真の蛾はもっと小さい気がします。詳しい図鑑がないのでネットで調べると、そっくりでさらに小さな「ヒメキスジホソハマキモドキ」という蛾もいるそうです。大きさだけで判断して良いのか迷いましたが、今回は「ヒメ〜」ということにしました。
マクロレンズで拡大撮影してみました。翅には何色もの複雑な模様が描かれ、脚にも縞模様が施されてとても綺麗です。そしてちゃんと長い口吻を花の中に伸ばし、蜜を吸っているようです。とても小さなミズヒキの花には、ちゃんと小さな虫が訪れるのですね。
大塚