



ぶん・ぶん・ぶん、ハチが盗る

軽井沢は新緑がまぶしい季節になりました。毎日次々と、新しく咲き始める花と出逢います。先日5月9日、野鳥の森の遊歩道を鳥獣保護区管理員の業務として巡回したので、その際に開花植物を記録しました。抜け漏れもあると思いますが、確認できた花は以下の通りです。
草本:カキドオシ、ハシリドコロ、トウゴクサバノオ、タチカメバソウ、ヤマエンゴサク、オオコガネネコノメ、ニッコウネコノメ、ワサビ、ヒゲネワチガイソウ、シロバナエンレイソウ、ホソバノアマナ、タチツボスミレ、サクラソウ、ミツバツチグリ、ムラサキケマン、クリンユキフデ、ヒトリシズカ、ヘビイチゴ、セイヨウタンポポ、セントウソウ(順不同)
木本:チドリノキ、モミジイチゴ、ヤマザクラ、ミヤマウグイスカグラ、クサボケ、カスミザクラ、コクサギ、アオナシ、ミツバウツギ(順不同)

オオコガネネコノメ(左)とニッコウネコノメ(右)
春一番に咲き始めるネコノメソウの仲間は、もう盛りをすぎています。でも探してみると、まだ綺麗な株が残っていました。

ニッコウネコノメの実
ネコノメソウの名前は、実の形が由来となっています。猫の縦長な瞳孔に似た形の鞘に、小さな種子がいっぱい入っています。

ハシリドコロ
食べると中毒をおこし、幻覚症状により走り回るというハシリドコロ。若芽は確かにおいしそうに見えますが、食べてはいけません。ただし薬の原料にも利用されます。こちらの花もそろそろ終わり。

カンスゲの仲間
カンスゲの仲間のようですが、調べても種類まではよくわからず・・・。高い場所に雄しべが、低い場所に雌しべが伸びています。花粉が風に漂って雌しべに運ばれる風媒花、より遠くに花粉が飛ばされるように、雄しべを高くしているのでしょうね。

ワサビ
ミソサザイの沢では、ワサビの花が咲き始めていました。アブラナ科植物の特徴、花びらが4枚であることがわかりますね。

チドリノキ
ミソサザイの沢にはチドリノキが多く生えていて、枝先から黄緑色の花を吊り下げています。花よりも赤い鱗片葉の方が目立ちますね。葉の形からは、カエデの仲間とは想像も付きません。

トウゴクサバノオ
足元にはクリーム色の小さな花がたくさん咲いています。トウゴクサバノオです。右側に写っている実の形が、鯖の尾に似ているというのが名前の由来です。似てますか?

タチツボスミレ
スミレの仲間も盛りを過ぎつつあり、ヒナスミレ、エイザンスミレ、ヒカゲスミレは終わってしまったようです。今、見つかるのはタチツボスミレばかり。これからツボスミレやエゾノタチツボスミレが咲き始めるはず・・・。

ホソバノアマナ
ひょろひょろと細いホソバノアマナを見つけました。小さいながらもユリ科の植物で、言われてみればユリっぽい?

クサボケ
名前に「草」とありますが、立派な樹木です。日本に自生する野生のボケ。冬には葉が落ちますが、トゲのある枝は林床にひっそりと群れをなして立っています。不用意に踏み入れると痛い・・・。

ヒトリシズカ
あっという間に散ってしまうので、気を付けてないと見損ねてしまうヒトリシズカ。静御前の舞姿に例えたそうです。

ヤマエンゴサク
筒状に伸びた長い花を咲かせるヤマエンゴサク。長い口吻を持つトラマルハナバチの女王バチが蜜を吸いにやってきて花粉を運びます。

よくみると穴が・・・
口吻が短い他の虫は、ヤマエンゴサクの花の奥深くにある蜜を吸うことができません。しかし中には、花に穴を開けて蜜だけを盗むものもいます。

ミヤマウグイスカグラ
アイキャッチ画像でも使用したミヤマウグイスカグラ。こちらも細長いラッパ状の花の奥に蜜があり、トラマルハナバチは花びらに脚を掛けて逆さまになって口吻を差し込み、蜜を吸います。
「ぶ〜ん」低い羽音を立ててハチがやってきました。

現行犯!
やってきたのはオオマルハナバチの女王バチ。花にしがみつくと口吻を・・・花の根元にぶすりと差し込んで蜜を吸っています。これではハチの体に雄しべや雌しべが触れず、花粉が運ばれる可能性がぐんと低くなってしまいます。口吻の短いオオマルハナバチが、花の横から穴を開けて蜜を盗む「盗蜜行動」です。ヤマエンゴサクに穴を開けた犯人も、このオオマルハナバチの女王バチなのでしょう。
特定の虫を呼んで確実に花粉を運ばせたい花と、効率よく蜜を集めたい虫の駆け引きは、一筋縄ではいかないのです。
大塚
春の森で自然を愉しむピッキオのネイチャーツアー/アクティビティはこちら。

