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「背景を知ること」こそがクマ対策の第一歩

夏本番を迎え、軽井沢は一年で最も多くの方が訪れる時期になりました。人の往来が増えるのに伴い、6月から8月にかけてはクマの目撃情報が多くなります。今年はニュースなどでクマへの関心が高まっていることも、目撃情報の増加につながっているようです。

一方で、毎年繰り返される夏の目撃には、実はクマ自身の「生態」も大きく関係しています。

それは、クマの「親離れ(子離れ)」です。

親離れをしたばかりの1歳のクマ

 

クマは1月〜2月頃、冬眠中に穴の中で子グマを出産します。生まれたばかりの子グマは体重がわずか300gほどしかなく、母乳だけを飲んで育ちます。軽井沢で母グマが子グマを連れて冬眠穴を離れるのはゴールデンウィーク頃です。その後、子グマは母グマと行動をともにし、もう一度一緒に冬眠した後、1歳の夏から秋に親離れの時期を迎えます。

過去(2007年)に保護したクマの新生児。

 

クマの親離れは、昔からマタギの間で「イチゴ落とし」と呼ばれてきたそうです。ちょうどその時期に旬を迎えるキイチゴを子グマが夢中になって食べている隙に、母グマはそっとその場を離れ、子グマのもとを去るという言い伝えです。

夢中になってヤマザクラの実を食べる1歳のクマ。このクマは「サクランボ落とし」をされたのかもしれない・・・

 

こうして突然独り立ちした若いクマたちは、まだ経験が少なく、人間との適切な距離感もわかっていません。特にオスの若グマは、新たな居場所を求めて遠くへ移動する傾向があり、移動の途中で人里近くに迷い込みがちなようです。また、森の中で条件が良い場所にはすでに体の大きなクマがいて、そこから押し出されてしまうという事情もあるのかもしれません。

実際に軽井沢でも、例年この時期に目撃件数を押し上げているのは若いクマです。それも、同一の若いクマが短期間に複数回目撃されるケースが目立ちます。

 

反対に、年老いたクマが繰り返し目撃されることもあります。
先日、目撃の通報をいただいて現場を踏査したところ、目撃されたクマがまだ近くにいました。日々さまざまな通報を受けて現場に赴きますが、こうして直接クマを発見するのは稀なことです。今回はクマの動きを観察しながら、そのまま奥山へ押し戻しました。

奥山へゆっくりと移動していく高齢なメスグマ

 

このクマは以前に捕獲したことのある23歳のメスで、野生のツキノワグマの中ではかなり高齢です。人の気配を察して逃げてはいくものの、動きは至極ゆっくりでした。実は、高齢に加えて片腕の肘から下を失っているのです。もしかすると、どこかでくくり罠にかかったことがあるのかもしれません。

夏の中盤、クマは木に登ってウワミズザクラなどの実を食べます。しかし、このメスグマは木に登ることが難しいのでしょうか、なんとこの時期になっても地面に残った昨年のドングリを食べていました。昨年のドングリの実りは、町全体としては並作でしたが、細かく見ると実りの良い別荘地もありました。その残りを頼りに食べつないでいたようです。追い払いの途中で木にぶつかることもあり、目もあまり見えていない様子でした。

 

一口に「クマの出没」と言っても、一頭一頭に異なる背景が存在します。その出没が一過性のものなのか、繰り返されるものなのか。そして繰り返される場合、それはクマの経験値の低さによるものなのか、誘引物などによるものなのか、あるいは身体的な要因なのか――。

クマの生態や個体ごとの事情を知ることは、決してクマの肩を持つためではありません。「なぜ今、ここにクマがいるのか」という背景を知ることは、私たちがパニックに陥らず、状況を冷静に理解して正しく警戒するために必要な、一つのプロセスです。

 

角屋

 

 

*****軽井沢の取り組みをもっと知りたい方へ*****

軽井沢町が設定しているクマとの境界線や、町の対策については【かるいざわツキノワグマゾーニングマップ】からご確認いただけます。

 

*****クマかな?と思ったら*****

町内で、クマの痕跡を発見したり、気になることがある際は、【クマ識別・通報ガイド】を、ぜひご参考にしてください。

また、【ツキノワグマ目撃・痕跡 通報フォーム】から、Webでの通報が可能です。

みなさまからの情報提供が、科学的根拠のある効果的な対策へとつながります。

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