高原を吹き渡る風に、秋を感じる季節となりました。この頃になると、国設軽井沢野鳥の森の遊歩道で、ヤマアカガエルによく出会います。
「カエルは水辺にいるもの」というイメージを持っている方が多いと思います。確かに繁殖期には、産卵場所となる水辺に集まって鳴くので目立つのですが、繁殖期以外は水辺から離れて暮らすカエルが多いのです。ケラ池に産卵に集まるカエルのうち、シュレーゲルアオガエルは樹上で、ヤマアカガエルとアズマヒキガエルは森の地面で暮らしています。
ヤマアカガエル
森の地面で暮らすヤマアカガエルは、地面に降り積もった落ち葉に似た色をしています。さらに下半身にあるまだら模様は、体の輪郭線をぼやけさせてカエルの存在を完全に消してしまいます。カエル本人もその事をよくわかっているようで、私に驚いて「ぴょん」と跳ねた先で、じっと動かずに息を潜めています。写真を撮ろうとカメラにマクロレンズを装着し、「さて」とカエルの方に目をやると見つかりません。カエルは動いていないのに、再発見するのにしばらくかかりました。
秋が深まってくると、ヤマアカガエルが再び水辺に集まってきます。彼らは冬を、凍結する心配のない水中で過ごすからです。水底に潜む彼らの体色は、暗い灰色に変化し、仄暗い水底で目立たなくなります。緑色のニホンアマガエルが体色を灰色に変化させるのは有名ですが、地味な茶色のヤマアカガエルも、体色を変化させて身を隠す術を持っているのです。
大塚