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縞模様の正体

様々な色の素材で作られたおしゃれな和紙・・・のようなこの物体。実はスズメバチの仲間の巣の外壁を拡大したものです。働き蜂が木材や樹皮をかじり取り、良く噛んでから薄く引き伸ばして作りました。それぞれの働き蜂が、違う場所から違う材料を集めてくるので、材料の色の違いが縞模様になるのです。灰色で薄い質感の外壁は、小型のスズメバチ「ホオナガスズメバチ属」のものです。地下に巣を作って幼虫や蛹が「蜂の子」として珍重される「地蜂(クロスズメバチ属)」に姿がよく似ていますが、樹上に巣を作る仲間です。

先日、軽井沢野鳥の森の遊歩道を歩いていたら、このような巣の外壁の破片がいくつも地面に落ちている場所を見つけました。

 

どうやら樹上にあった巣が壊れて、落ちてきたようです。見上げると、ミズキの枝に大きな破片がぶら下がっています。さらに上には、直径30センチほどの大きな丸い巣が、横に大穴を開けた状態で葉陰にぶら下がっていました。周囲を探すと、外壁の破片だけでなく、巣の中にあった巣盤も落ちています。

巣の中にいたはずの幼虫や蛹は、全て綺麗に引き抜かれていました。どうやらこの巣は、風などで破壊されたのではなく、天敵に捕食されたようです。

多数の働き蜂の毒針に守られたスズメバチの巣を、捕食できる天敵とは何でしょうか?まず思い付くのが同じスズメバチである「オオスズメバチ」。秋には巣が巨大化し、巣で待っている大勢の幼虫のお腹を満たすため、他のハチの巣を集団で襲います。しかし、巣の入り口を自分たちが入れるように広げるくらいで、巣を大規模に破壊することはないでしょう。

ツキノワグマはどうでしょうか?木の実が少ない夏の時期は、よくアリやハチの巣を襲いますし、木に登ることもできます。でも巣盤の中の幼虫や蛹を、大きな爪で1匹ずつチマチマと引っ張り出して食べる姿は、ちょっと想像しにくいですね。クマが食べたにしては、食べられた巣盤が綺麗に残りすぎていると思います。

実は樹上でスズメバチの巣を襲い、巣盤の幼虫や蛹を1匹ずつつまみ出して食べる捕食者がいるのです。その正体は猛禽類の「ハチクマ」。ハチの幼虫が大好物なタカで、巣のヒナにもスズメバチの巣盤を運んでくるそうです。今の季節、もう子育ては終わっているでしょうから、ハチクマはその場で「蜂の子」を賞味するでしょう。そして巣の下に、空になった巣盤を落として行ったのではないでしょうか。

ハチクマは、東南アジアから日本各地に渡ってくる渡り鳥です。目撃されるのは稀ですが、その時期からすると、どうやら軽井沢でも繁殖しているようです。彼らはこれから、東南アジアへと長い旅に出発します。栄養豊富な蜂の子は、そのスタミナ源になるのでしょうね。

大塚

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