アオゲラに何が起きたのか?
今年の冬は雪が少なく、軽井沢野鳥の森もほとんど雪が溶けています。ただ、日陰の遊歩道は踏み固められた雪が凍結しているので、散策される際には靴に装着する滑り止めがあったほうが良いでしょう。連休明けの1月14日、スノーブーツに滑り止めを装着して、所々ツルツルになった遊歩道を巡回しました。木の実が残り少なくなったのか、ツグミの姿がずいぶん少なくなりました。平地に降りてしまったのでしょうか? ベニマシコやルリビタキの姿を確認しましたが、残念ながらまともな写真は撮影できませんでした。
はるか頭上のカラマツの幹を登るアオゲラを観察してから、昔からあるアオゲラのねぐら穴の前を通り過ぎようとした時、その穴に違和感を感じました。穴から何枚もの羽毛がはみ出しているのです。1枚目の写真をご覧ください。
以前にも入り口に羽毛が1枚引っかかっていたのを見つけて写真に撮ったことがあるのですが(昔のブログ記事)、今回は1、2枚ではありません。しかも腹部と思われる白黒だんだら模様の羽毛の奥に、背中らしき緑色の羽毛も見え隠れしています。大量の羽毛が抜けているようです。もしやと思い、木の根元を探すと、地面にも何枚もの羽毛が散っていました。
よく見ると、羽毛の付け根が断ち切られてたようになっています。根元から自然に抜けたものではありません。周囲から拾い集めた羽毛を持ち帰り、紙に並べて貼り付け、スキャンしてみました。
尾羽の半数と翼の風切羽、体を覆う羽毛も、オリーブ色の背面と、白黒まだらの腹面があります。体のいろいろな部分の羽毛が含まれている事を考えると、持ち主のアオゲラの生存は絶望的なようですね。このアオゲラに、一体何が起きたのでしょうか? ねぐら穴に羽毛が残されている事から、おそらく夜間に寝込みを天敵に襲われ、捕食されてしまったと考えられます。犯人は誰でしょう?
猛禽類は昼行性ですし、穴の中まで入って襲うことはないでしょう。それに食べる際には羽毛を根元から引き抜くので、今回の根元が断ち切られた羽毛は別の犯人を想像させます。フクロウは夜行性で、ねぐら入りしている野鳥を襲うことは知られていますが、この穴は小さすぎて侵入できそうにありません。実はこの穴にはムササビが寝ていたこともあるのですが(以前の記事)、基本的に植物食なので除外しましょう。あと考えられるもの、樹上に登り、穴に入り込んでくる・・・「テン」はどうでしょうか? 足跡や糞は野鳥の森にもよく残されていますし、夜にも活動し、巣穴の中のムササビの幼獣を襲うこともある、有能な捕食者です。
動物が野鳥を捕食した際に残される羽毛は、噛みちぎられて途中から断ち切られたようになると聞いたこともあります。今回拾い集めた羽毛は、それに該当しそうです。状況証拠の積み重ねでしかありませんが、アオゲラを襲ったのは「テン」ではないでしょうか。テンはどのようにアオゲラを襲ったのでしょうか? 頭から穴に入って行ったのか、前足だけを突っ込んで引きずり出したのか? アオゲラは抵抗したのでしょうか? 私たちが見ていないところで、生死を掛けた闘いがおこなわれていたのです。
大塚